ケルビンプローブフォース顕微鏡（KFM；Kelvin Probe Force Microscope）は走査型プローブ顕微鏡の一種で, 原子間力顕微鏡の応用によって, 様々な試料の表面電位をナノスケールで計測することができる顕微鏡である.
本研究では, KFMにおけるカンチレバーの振動を連続体カンチレバーモデルで近似して, 数値計算する.
本研究では, KFM連続体カンチレバーモデルにおいて, 原子間力顕微鏡モデルにおいて報告された共振周波数付近の側波成分に着目する.
特に, ２次振動モード共振周波数近傍の周波数スペクトルにおいて, 探針と試料の電位差を大きくしてカンチレバーにかかる静電気力が印加された場合に側波成分がどのように変化するかを調査する.

音楽生成への応用の基礎として、簡素な特徴量を用いて、基本セルオートマトンを解析する．

PSOを分岐集合探索へ応用する問題を,分岐ニューロ ンの周期倍分岐を例題として検討する.

バイクシェアリングシステムで生じる自転車の過不足台数を調整するために,複数の自転車回収車を用いた自転車再配置問題(mBSSRP)を提案したが，mBSSRPは制約条件が厳しいため，提案解法は一部の問題例に対して実行可能解を得ることができない．そこで，mBSSRPの一部の制約を取り除き，その制約に対する重み付きの違反量としてmBSSRPの目的関数に加えたソフトな制約付き mBSSRP(mBSSRP-S)を提案した．mBSSRP-Sを解いてmBSSRPの実行可能解を得ることでmBSSRPを解くよりも優れた解を得られるが，計算時間は増加する．そこで本稿では,計算時間を短縮するために近傍数を削減した解法を提案し，その性能を報告する.

最大電力点追従(MPPT) の代表的な手法に山登り法がある．MPPTにおいて時間とともに日射量やセルの影が変化する環境では, 評価関数は多峰性で動的となるため，従来の手法ではMPPへの追従が困難．動的最大追従点のための複数粒子山登り法を紹介し，その動作を検討するために複数粒子を用いた山登り法を動的最大電力点追従に対して適用した．従来の研究では山登り法、粒子群最適化法が用いられている．本論では提案する手法として複数粒子を用いた山登り法を用いました．複数粒子を用いた山登り法のアルゴリズムを改良した手法も用いて数値実験を行い，部分影の環境では従来の手法に比べ高い平均追従効率を得た．

我々はすでに，convergent cross mappingの適用対象を点過程データに拡張した
ISICCM法という点過程データ間の因果性解析手法を提案している．
本稿では，
数理モデルから生成したマーク付き点過程データに対して
ISICCM法により因果性が検出可能であるかを調査したので報告する．
また，マーク付き点過程データは，ローレンツ方程式とレスラー方程式の結合形から生成した．
その結果，マーク付き点過程データに対しても拡張したISICCM法は有効である可能性が示唆された．

昨今，インフルエンザや新型肺炎などが猛威を奮っており，これらの被害の抑制が求められている．
また，適切な人に免疫を与えることにより大規模拡散を抑制することが可能との報告がある．
本稿では，既存手法\cite{MABE}より少ない免疫配置数によってウィルスの拡散を抑制することを目的として，
新たな免疫配置手法を提案し，従来手法との比較実験を行い性能を調査した．

Human photoplethysmogram (PPG) is widely used for health monitoring. As the PPG dynamics is chaotic, advanced analysis is necessary to widen PPG applicability for the health monitoring applications. Methods of nonlinear time series analysis are applicable for detecting physiological and mental condition changes in the PPGs. However, even in healthy subjects, PPG signal changes with the subject’s age. Therefore, it is important to be able to distinguish age-related changes in healthy subjects’ PPGs. This study aims to investigate whether age-related changes can be detected by the methods of recurrence quantitative analysis in short-recorded PPGs from healthy subjects.

Studies of the continuous limit of the neural network have attracted increasing interest recently. In this paper, we evaluate the continuous limit of the multi-layer neural network and employ the graph limit theory and the dynamical system.

生理学的知見によれば，大脳皮質では興奮性ニューロンと抑制性ニューロンは約4:1の比率 (以下，生理学的比率) で存在するといわれている.しかし, なぜこのような比率となるのか，またこの比率が変化した場合，脳内の神経活動にどのような影響があるのかについては明らかになっていない.本稿では，興奮性/抑制性ニューロン比率を変化させた場合のニューロン間のシナプス伝達情報量を調査した.まず，Delayed Transfer Entropyを拡張した指標を提案し，その有用性を示した.さらに，提案指標を適用した結果，生理学的比率付近で興奮性シナプスの有する平均情報量が向上することを明らかにした.この結果は，ネットワーク全体の複数のニューロンに情報が伝播し，これにより発火が促進されることを示唆するものである.

近年，複雑ネットワーク上での情報拡散に関する研究が盛んに行われている．我々は既に，静的なネットワーク構造が情報拡散に与える影響について調査した結果を報告している．一方，現実世界には静的なネットワークだけでなく，構造が動的に変化するテンポラルネットワークも数多く存 在する．そこで本稿では，時間と共に構造が変化するテンポラルネットワークに対して，情報への関心度に着目した情報拡散モデルを適用し，テンポラルネットワーク上での情報拡散に関する調査を行ったので報告する.

本論文ではデジタルスパイクマップの進化的合成について考察する.

様々なスパイク列を生成するデジタルスパイクマップの自己組織化的学習について考察する. デジタルマップは点の集合上で定義されるデジタル力学系であり, その定常状態は必ず周期軌道となる. 初期値やパラメータに依存して様々
な周期軌道を呈することができる. 入力信号に依存してデジタルスパイクマップを自動的に生成するために, 自己組織化マップに基づく簡素な学習アルゴリズムを提案する. 典型的な例題として, 分岐ニューロンに基づくカオス的系列を入力とした場合に生成されるデジタルマップの動作を解析する. 解析方法としては, 周期軌道の多様性に関する簡素な特徴量を用いて行う.

複雑ネットワークの観点から言語解析を行うことで，異なる言語で記述された文書から得られる言語ネットワークの構造的特徴の差異が，各言語の文法構造上の特徴を反映することを示す結果が報告されている．
しかし，言語ネットワークの作成に用いた文書内容が言語間で同一ではないため，言語ネットワークの構造的特徴の差異が，文法構造ではなく文書内容によって生じた可能性が残されている．
本稿では，同一内容の文書が異なる言語で翻訳されている新約聖書を解析対象として，文書内容の同一性がネットワークの構造的特徴の差異に与える影響の有無を調査した．
結果として，ネットワークの観点から言語解析を行う場合，文書内容の同一性は重要な要素であり，この意味でも，新約聖書を用いた解析は必要であるということが示唆された．

再帰型ニューラル・ネットワークの一種であるリザーバ計算は，学習を出力層のみで行うため，
計算コストが低く，物理的実装も容易であり，低消費電力性が求められるエッジデバイスでの情報処理にも適している．
本研究では，伝搬遅延を組み入れた教師なしSTDP学習によって，
ローカルな情報のみから時系列信号の分類を可能とするモデルを提案する．

3層動的バイナリーニューラルネットを用いて，周期軌道の切り替えを行う.

非線形時系列解析には、遅れ座標 の発見から始まる40
年ほどの歴史がある。過去30 年ぐらいの間、線形で確率論的
な対象と、非線形で決定論的な対象を対比するための、サ
ロゲートデータ解析 が開発されてきた。しかし、線形性-
非線形性の検定と、決定論性と確率論性の検定が区別され
て来なかったため、仮説検定の枠組みで、非線形で確率論的
な対象が、はっきりとは同定されて来なかった。
そこで、2017 年から、非線形で確率論的な対象を同定する
手法を開発してきた。この３年間の研究を要約して端的にいうと、
決定論性-確率論性の検定は、
permutationsやrecurrence trianglesの出現する数が、
motifs のサイズを大きくして行ったときに、指数的に増大
するか、そうでないかという性質に着目することで構成で
きる。

組合せ最適化問題を高速に解くCoherent Ising Machine(CIM)の実装開発が進められており，MAX-CUT問題等において有効性が確認されている．多くの組合せ最適化問題はIsing modelのエネルギー基底探索問題としてマッピングできる事が知られており，CIMはIsing model の基底状態を超高速に求める事ができる．様々な問題をIsing modelにマッピングするためには外部磁場項の導入が重要である．本稿では，これまでに検討されているCIMへの外部磁場項の導入方法について理論計算を行い，解が安定に埋め込まれているか確認した．外部磁場項の導入には3つの方法が検討されており，そのうちの2つに設定すると，解が安定しなくなる可能性を示した．残りの１つに設定した場合，条件にかかわらず最小化が可能になる事を確認した．

Coherent Ising Machine(CIM)は，イジングモデルの基底状態探索問題に変換された組み合わせ最適化問題を高速に解く計算機である．
CIMを最適化問題に適用するためには，外部磁場項を導入することが重要であり，導入方法については複数の方法が検討されており，解の安定性の理論解析も行われている．
本稿では，外部磁場項が必要となる問題例として，巡回セールスマン問題(Traveling Salesman Probrem，TSP)にCIMを適用し，3つの外部磁場項について比較検討を行う．
シミュレーション結果を比較することで，理論解析によって示された外部磁場項を導入した時に最も解が安定し，TSPにおいてもこの時に最も性能が高くなることを確認した．

Ising modelの基底状態探索によって組み合わせ最適化問題を高速に解くことが可能なCoherent Ising Machine(CIM) が開発されている．様々な組み合わせ最適化問題にCIMを応用するためには外部磁場項の導入が重要であり，複数の方法が用いられている．また現在，外部磁場項の導入方法について安定した解を得るための理論解析が行われている．本稿では，外部磁場項が用いられる2次割当問題(Quadratic Assignment Problem，QAP)にCIMを適用し，3つの外部磁場項の導入方法について比較検討を行うことで，理論解析によって示される導入方法の時に最も解が安定し，QAPにおいても解が安定することを示す．

強化学習の問題例の1つとして多腕バンディット問題が挙げられている。多腕バンディット問題を解決する手法として綱引き理論を用いた戻り光を有する半導体レーザカオスによる実装が行われている。さらに、トーナメント方式を用いることでスロットマシンの台数を拡張させる手法が提案されている。しかしながら、従来法による意思決定の報告例はスロットマシンの台数が 64 台までの問題に限られている。そこで本研究では、半導体レーザの複数のカオス波形を比較してバイアス値を変化させる手法を提案し、多腕バンディット問題における意思決定の調査を行う。さらに、1024 台までのスロットマシンにおける多腕バンディット問題にて意思決定の成功を示した。

強化学習は深層学習を用いた実装により注目が大きく集まり，多くの研究開発が行われている．
しかしながら深層学習による実装は，速度やエネルギー効率の面で課題がある．
本研究では，強化学習を時間遅延リザーバコンピューティングを用いて実装する．
リザーバコンピューティングは深層学習よりも学習が簡易であるため，速度やエネルギー効率が良い．
数値シミュレーションにより本手法を実装し，強化学習タスクの１つであるCartPoleタスクを行った．
シミュレーション結果により，時間遅延リザーバコンピューティングはCartPoleタスクが成功するように学習を行えることが分かった．

Clos網は３段構成のスイッチ網であり，重要な応用があることから長い間研究されてきた．再配置型Clos網の呼ばれる構成では，新しい接続要求があったとき，既に設定済みの接続が接続経路をふさぎ，接続不可能となるブロッキングが発生する．ブロッキングは設定済みの接続を再配置することで解消できるが，その再配置の実行回数を明らかにすることは興味深い問題である．再配置する接続の集合は，すでに知られている接続の鎖の概念で表現できる．本稿では，拡張した接続の鎖の概念を用いることで，新しい再配置回数の上界値を理論的に導き，従来の結果と比較する．

非同期セルオートマトンを用いたCPG (Central Pattern Generator) モデルは発振器の結合のパラメータを調整することで，発振器の位相差を変化することができる．これを利用することで4脚歩行ロボットは様々な歩容を実現できる．本稿では，同発振器の結合パラメータの探索をする．

本稿では, 非同期セルオートマトンを用いた蝸牛モデルの非線形応答特性を考察する．そして，モデルの各パラメータが周波数応答特性に与える影響を解析し，モルモットの周波数応答特性を再現するためのパラメータの調整法を検討する．

本研究では区分定数ベクトル場を持つニューロンモデルが呈するバースト発火の分岐現象を解析する．また, 同モデルが呈する分岐の構造とコンダクタンスに基づいたニューロンモデルが呈する分岐の構造と比較する.