電源回路など回路方程式が切り替わる合成力学系には，パラメータの変化に伴ってカオス的な振る舞いが生じ，スイッチングリプルが増加することが知られている．先に我々は，合成力学系に適用可能なカオス制御手法を提案したが，制御目標である不安定周期軌道の導出にはポワンカレ写像だけでなく，ポワンカレ写像の初期値微分値及びパラメータ微分値を導出する必要がある．
そこで，本稿ではポワンカレ写像を必要としないスイッチングリプル低減手法を提案し，断続回路を用いた実験的検証について報告する．

6つのファンデルポール発振器からなる結合系の回路実験について報告する。この結合系からの一般化同期と振幅の死の同時発生が、回路実験により確認される。

独立した複数の発振器に外部ノイズを加えて同期させる方法は，パラメータミスマッチのある積分発火型発振回路においても報告されている．一方，ノイズが確率的に同期を妨げる場合もあることから，本研究では，発火した瞬間から一定時間だけ，発火を強制的に抑止する不感帯回路をこの発振回路に組み込んだ．本報告では，ノイズ誘起同期について，実験結果をシミュレーションと対比させることを容易にするために，ホワイトノイズを用いた．その結果，シミュレーション結果に比較して，実験で得られる同期割合の最大値および最適不感帯幅に差異がみられた．その原因として，ノイズから生成されるトリガパルスの出現頻度のわずかな違いや発振波形のひずみ差異が考える．

光電入力昇圧コンバータについての基礎研究として入力を電流制御電圧源(CCVS)に置き換えた昇圧コンバータについて解析を行った。微分方程式を無次元化し、無次元化方程式から典型的な電流波形を導出した。また、連続なものを離散的に表現したMAPを定義し、安定性についての目的関数を定義した。もう一つの目的関数をリップルとし、パラメータ3つのうち2つを固定し、2つの目的関数にはトレードオフの関係があることを発見した。今後は電力についての目的関数を導出し、安定性と電力、リップルと電力についての関係性を確認していきたいと考える。

ヒステリシスニューラルネットは，２値ヒステリシス活性化関数と実数値相関結合パラメータで特徴づけられる．そのダイナミクスは区分線形微分方程式で記述され，厳密な解析が可能となっている．ヒステリシスニューラルネットの持つ安定平衡点は記憶とすることで連想メモリへの応用が可能となっており，このときの所望の記憶は相関学習を適用することで埋め込みを保障されている．しかし，記憶を埋め込んだ際に生じる偽記憶の抑制が課題っとなっている．
そこで，スパース化により結合パラメータの値を0に置き換えると偽記憶を抑制することができる性質を用いて，偽記憶数とスパース性の２目的最適化問題の考察を行った．

脳の神経細胞(ニューロン)やニューロン同士をつなぐシナプスの電気的動作を電子回路で模倣したスパイキングニューラルネットハードウェア（SNN-HW）の研究が進められている。スパイク発生時間や時間間隔で情報処理を行うSNN-HWは時系列データ処理に強く、その内部構成に時系列データ処理が可能なリカレントニューラルネットワーク（RNN）を採用する事で高精度な時系列データ予測・異常検知システムの構築が可能である。
本研究では、教師なし学習によりRNN構成を使用状況に応じてその場で最適化する方法を考案し、SNNシミュレータを使用してその手法の有効性について検討した。

重症のパーキンソン病患者に対して用いられている深部脳刺激（DBS）が引き起こす副作用を解決するため，エネルギー効率的な刺激法の開発は非常に重要である．本研究では可塑的な神経ネットワークを導入し，コーディネート・リセット（CR）神経調節のエネルギー効率的な非同期化について検討した．その結果，可塑的なネットワークの場合は電流を停止した後の同期レベルの急速上昇をある程度抑制できることを明らかにした．さらに，適切な刺激パターンを設定することで，エネルギー消費量を変えずに同期レベルを下げることが可能であることが示された．

本論文では、生物の脊髄が生成する歩行制御信号の出力を模倣したハードウェアニューラルネットワークICチップの開発を行った。生物の脊髄には、歩行制御信号を生成する神経回路網が存在する。神経回路網は、多様な電気信号パターンを生成し生物の運動を制御している。神経回路網を工学的に模倣することで、生物の様に自律的な運動の制御が可能なロボットの制御システムの開発が期待できる。工学的模倣の一つに電子回路を用いた手法があり、なかでも我々はパルス形ハードウェアニューラルネットワークに着目した。本論文では、4足歩行と2足歩行の制御を想定したハードウェアニューラルネットワークICの開発を行った。

我々は顔画像の感情分析を検討する。先行研究ではCNN を用いて、57.1%の認識精度で感情分類している。本研究では、これを改良し、感情分析精度向上を目指す。結果先行研究モデルよりも正解率が高くかつ少ない更新回数で学習が行えるCNN モデルを提案した。

我々はこれまでにSentence-BERTが生成する文章の分散表現である文ベクトルが文章の意味をどの程度捉えているかをk-meansやUMAPなどを用いて検証し，生成される文ベクトルが文章の意味を極めて高くとらえていることを確認した．
本稿ではSentence-BERTで生成された文ベクトルから画像生成を行い，文章の意味に合わせた画像の変化ができるかどうかについて検討を行う．

分類タスクを解くためのニューラルネットワークでは一般的に，中間層1層目から出力層に向かって次元数が減少する構造を用いる．
本稿では次元数をどのように減少させる構造が適切であるかを検討する．

Boidsはパラメータによって様々な行動を観察することができる．
各Boidの速度ベクトルはSeparation，Alignment，Cohesionの3種で決定される．
これら個別に設定される自分からの距離 ``Distance''と，進行方向の注目範囲 ``Angle''で決定され，これらの値で様々な行動を呈する．
本稿ではBoidsに捕食機能を追加したとき，非捕食者がどのような群れ運動を創発するのか確認する．
また，種間相互作用から個体数がどのように変化するか確認する．

哺乳類の耳は外耳, 中耳, 内耳で構成されており，音は外耳から中耳へ, 中耳から内耳へと伝わり処理される. 本研究では音の信号処理を担う内耳に属する蝸牛について注目し, エルゴ―ド的セルオートマトンを用いて蝸牛モデルを設計し, その結合音現象を解析する.

生物の中枢神経系に存在するCentral Pattern Generator (CPG) は歩行や咀嚼，遊泳，飛行といったリズミカルなパターン運動を発現させることが知られている．本研究では，エルゴ－ド的セルオートマトンCPGを用いた12自由度6脚ロボットのテトラポッド歩容の実現に取り組む．

空気中などに存在するリポ多糖(LPS)は内毒素として作用し，摂取するLPSの量に応じて，Th1，Th2，Th17という3つの異なる免疫反応を引き起こすことが知られている．そして，Th17は免疫応答の制御，特に喘息の発症において重要な役割を果たすことが知られている．本研究では，様々なLPS量に応じて3つのTh表現型(Th1，Th2，Th17)の間で型が切り替わる数理モデルをシミュレーションするためのエルゴード的セルオートマトンを設計する．

2019年末から2022年現在まで、COVID-19は世界中で感染拡大を続けてきた。2022年6月29 日時点において、累計感染者数は全世界で5.4億人、日本においても927万人を超えている。本研究では、SIRモデルからスタートし、いくつかの仮定を設けることで大規模GPSデータを用いた実効再生産数推定モデルを新たに提案し、単純なモデリングによって実効再生産数が直接予測可能であることを示した。また、デルタ株やワクチンの効果もモデルに取り入れ、定量的に見積もることに成功した。

近年，バイクシェアリングシステム (BSS) が注目されている．BSS は，自転車を借りた ポートとは異なるポートに返却が可能なため，ポート間で自転車台数に過不足が生じる問題がある．この問題を解決するため，自転車回収車を用いて短時間で効率的に再配置作業を行う手法の提案を行っている．さらに我々は，BSSの実際の利用履歴データを点過程と捉えることで解析を行い，平日と週末の利用パターンに差がないことなどを明らかにした.本稿では，BSS の利用履歴をテンポラルネットワークと捉え，スペクトル距離を用いて解析を行った結果を報告する.

本稿では，小学校のコンタクトデータから生成したテンポラルネットワークを対象にスペクトル距離とCMDSを用いて解析を行った結果を報告した．数値実験の結果，CMDSから得た時系列はネットワークの状態変化を捉えることができること，また時系列から，再構成したアトラクタからコンタクトには再帰性があることが確認できた．

我々はすでに，スパイク列間隔 (ISI) からのアトラクタ再構成と時間的対応関係に着目した点過程に対する非線形因果性検出手法を提案している．本稿では，疑似相関が発生するような結合形態に対して，提案手法の有効性を検討した．その結果，疑似相関が発生するような結合形態においても提案手法による因果性検出は有効であることがわかった．

動的バイナリーニューラルネットワークの進化的スパース安定化についての研究。+1,-1からなる目標2値周期軌道を設定し、この目標周期軌道を生成する動的バイナリーニューラルネットワークの動作式に基づく結合パラメータとしきい値を定義した。結合パラメータは+1,-1の2値からなる。また、1ステップの結合で周期軌道に落ち込む直接安定性を周期軌道の安定性として定義した。この結合パラメータを0を埋め込みスパース化していき、周期軌道の安定性との関係性を調べた。スパース化の方法として0を1個ずつ埋め込み一番安定性の高い座標を選択する作業を周期軌道が生成しなくなるまで繰り返した。

バイナリーニューラルネットワークは簡素なニューラルネットワークであり，結合パラメータとシグナム活性化関数によって特徴づけられる．私が行っている研究では，不動点をクラスタの中心とし，一つのクラスに
いくつのデータが落ち込むか，すなわち，それぞれのクラスタに何個のデータが分類されるかを考察している．

マルチレート環境において，ユーザの協力行動をもとに，ユーザ間の干渉を考慮したシステム全体のスループットを最大化させるアクセスポイント接続法が提案されている．ユーザの協力行動とは，新規ユーザが，APに接続する際にシステムスループットを向上させるために移動することである．しかし，システムスループットを向上させるためには，全てのユーザの伝送レートを向上させる必要があるにも関わらず，既存研究では新規ユーザの伝送レートしか考慮しておらず，既にAPに接続していたユーザは考慮していない．そこで，本研究では既存研究で用いていたポテンシャルゲームのプレイヤーを新規ユーザのみではなく，既存ユーザも考慮に入れたシステムスループットを最大化するAP接続法を提案する．

パーミュテーションバイナリーニューラルネットワーク(PBNN)の呈する周期軌道とその安定性について考察する．PBNNは局所結合，シグナム活性化関数，大域置換結合によって記述される．PBNNは，従来のリカレントニューラルネットワークと比較して簡素な数学モデルである．しかし様々な周期軌道を生成し，動作も正確に解析することができる．周期軌道の解析に関しては特徴量の導入，特徴量平面，FPGA回路を用いて解析を行った．特徴量は，複雑性と安定性をそれぞれ評価するものを導入した．FPGA回路では，典型的な周期軌道を実験的に観測した．今後の課題としては，より詳細な解析を進めることである．

自動運転技術やオンラインゲームにエッジコンピューティングを用いる場合，全ユーザのリアルタイム性を確保する必要があるため，最大遅延時間を削減する事は重要である．エッジサーバに送信される計算処理要求(以後，タスクとする)の平均待ち時間はサーバの利用率に依存するため，利用率に偏りがあると平均待ち時間にも偏りが生じ，最大遅延時間の増加に繋がってしまう．既存手法ではタスクの端末-エッジサーバ間の送信による遅延の削減を目指したが，その結果，各エッジサーバの利用率のばらつきが大きくなっていることが分かった．そこで本研究では，エッジサーバの利用率を平等にするエッジサーバ配置決定，タスクのエッジサーバ割り当て決定を行う．

これまでに呼を警察や消防の利用する緊急呼と被災地内から発生する被災地呼，被災地の外から発生する被災地外呼に区別した受付制御技術が提案されている．しかし，これは固定電話等の回線交換網における受付制御であり，現在主流となっているパケット交換網にそのまま適用するとパケットロスの増大につながる可能性がある．そこで，本研究では，既存研究}の受付制御をパケット交換網に適用した際のパケットロス率の解析を行う．