折り紙ロボットの輸送面における利点は軽さと薄さにあり，軽くて薄い形状記憶合金を搭載してもその利点は損なわれない．しかし，形状記憶合金の温度は環境の影響を強く受け，流した電流量だけで変形量を制御することは難しい．そこで我々は折り角の変化によって導通状態を変化させる構造を用い，電源と直列接続して形状記憶合金を直接制御する手法を提案した．この手法はマイコンを必要とせず，薄く作りやすいが，制御対象が増えると銅テープ構造が複雑になり，用いる銅テープも増加する欠点があった．そこで本稿では，折りの遷移を自律分散制御によって制御することでこの欠点を解決した．

耐量子コンピュータ暗号の候補の1つとして, 拡張Lorenz写像に基づく安全性の高いカオス暗号が提案されている. しかし, 現代のストリーム暗号と比較すると, 生成速度に課題がある. そこで, ハードウェア実装により, 高速化すると同時に小型化, 低消費電力化を目指す. 我々はこれまでに, 写像中のsin関数の回路実装方法を検討し, ビット長を短くしても, 乱数の性能が保たれることを示している. そして, 写像中のその他の演算要素に対してビット長を削減するため, 演算精度の検討を行った. その結果, ビット長を短くしていくと, 生成された疑似乱数はNIST検定に一度合格しなくなるが, さらに短くすると合格するビット長が存在することがわかった.

カオスには多くの周期軌道が共存する．この周期軌道を安定化する問題をカオス制御という．周期軌道を事前に求めることが難しい場合には遅延フィードバックが有効である．しかし，システムパラメータが未知なとき，制御パラメータの決定は難しい問題である．本報告では，カオスが存在するエノン写像に対して，強化学習を用いたモデルフリーなカオス制御法を提案する．

ソフトロボットは環境に柔軟に適合し，また安全なインタラクションができることから盛んに研究されている.しかし，柔らかさが原因で所望の姿勢を維持するのが困難になるという根本的な問題がある.この問題に対し骨格を持たないイモムシなどの生物は，外部環境を自身の骨格のように利用することで対処している.この事実に着目し，ロボット自身で自重を支えられなくても，外部環境を利用することで枝のような3次元的に複雑な環境で自在に動き回ることができるのではないかと考えた.そこで本稿では，上記目的の初期段階としてイモムシ型ソフトロボットの数理モデルが逆さまの状態で重力に屈することなく前進できる条件をシミュレーションにより明らかにした.

燃焼振動が発生するメカニズムをあらわす記述関数を用いた音響・熱結合の伝達関数モデルに対し，フィードバック制御として制御偏差から自律的にパルスを発生させるリセット制御を適用する．そして，このモデルに対して燃焼振動を抑制させるリセット制御の調整パラメータを求め，燃焼振動が発生するシミュレーションを実施して，当該パラメータを設定したリセット制御を適用すれば，抑制できることを示す．

スパイク発振器の結合系は条件によりカオス的な同期・非同期的な現象を示すことが知られている．OSCDPは，スパイク発振器のダイナミクスに基づく群知能最適化手法であり，この粒子は，位置と速度の位相平面上をカオス的な軌道により探索を行う．本研究では，粒子を構成するスパイク発振器同士を結合させ，それらの相互作用により解空間上の探索軌道が同期・非同期的になる手法を提案する．提案手法の粒子は，同期・非同期的な探索軌道をパラメータにより制御可能であることを数値実験により示す．

動的バイナリーニューラルネットの結合の成長による周期軌道の安定性の変化を考察する.

デジタルスパイキングニューロンを構成要素とするデジタルスパイキングニューラルネットの呈する同期現象について考察する．

所望の特性を有するデジタルスパイクマップの
合成とハードウエア実装について考察する.

ニューラルネットワークでは，結合したニューロン間の発火タイミングに依存する Spike Timing Dependent Plasticity (STDP) 学習則によってニューロン間のシナプス結合強度が変化する．また，生理学知見より大脳皮質では興奮性ニューロンが 約 80%，抑制性ニューロンが約20%の比率で存在するといわれている．しかし，この比率が変化した場合，脳内の神経活動にどのような影響があるのかについては明らかになっていない.
興奮性/抑制性ニューロン比率を変化させた場合のニューロンのシナプス結合強度とそれらを枝の重みとするネットワーク構造への影響について調査した.
その結果，ニューロンの入結合が非選択的かつ出結合が選択的であるときに，ニューロンは活発化することを示唆した.

我々は既に，マーク付点過程データをネットワークに変換する拡張 Visibility Graph 法を提案し，楽曲構造解析に適用した．本稿では，提案手法を用いて，楽曲構造の特徴抽出について，作曲者の差異という観点からの解析を行う．Beatlesの楽曲を対象とした数値実験の結果，拡張VG法は作曲者が異なる曲を同定できたので報告する．

非線形素子間の結合関係の同定は重要な非線形問題である．
我々は既に，Convergent Cross Mapping (CCM)と呼ばれる因果推定手法を
応用したネットワークの結合推定について報告している．
現実の脳神経系では，神経細胞から得られるスパイク列のように
イベント発生時刻の情報しか得られない場合がある．
本稿では，CCMを拡張することで2つのスパイク列間の
因果関係を推定する手法を提案する．
数値実験を行なった結果，
提案法ではスパイク数が異なる場合に有効となることがわかった．

決定論的非線形力学系のアトラクタ上の二点間距離を定量的に解析する手法としてリカレンスプロット (以下，RP) とその拡張手法が提案されている．RPを算出する際には，二点間距離の近接性を定めるための適切 な閾値設定が必要とされている．我々は既に，この閾値を局所的な状態から大域的な状態に変化させることで，解析対象の時系列信号の特徴を抽出する手法を提案している.　本稿では，閾値設定を領域的にすることで，ア トラクタ上の各点から同程度の距離・方向にある点の集 合を抽出しRPを作成する手法を提案する.　さらにこの閾値領域を近傍的領域から遠方的領域へと変化させるこ とで，解析対象となるアトラクタ構造の空間的特徴を解析した結果を報告する．

近年，再生可能エネルギーを用いた発電方法が注目されているが，風力発電に関しては地形が複雑な日本においては風況変化が複雑なため，安定した電力供給が難しい．そこで我々は時間帯や季節により変化すると考えられる風向，風速を予測し，その予測に合わせて風力タービンの向きを回転させることで風力発電の効率並びに電力供給の安定性は向上すると考え，風況予測を試みている．これまで多層パーセプトロンなどを用いて予測を行ったが，精度の良い結果は得られていない．本報告では，データ同期により風況データを粗野化パターンに分類し，その特徴パターンの予測をリカレントニューラルネットワークの一種であるLSTMにより行い，予測精度の向上について論じる．

ウミネコ(Larus crassiostris)は着地動作に対する優れた運動能力を持っている. 本研究では, ウミネコが着地する際の迎え角に着目し, 迎え角によりどのように着地を実現しているのかを, データ計測と数理モデリングにより研究した. データ計測では2台のカメラでウミネコを撮影し, 迎え角と飛行軌跡を時系列データとして定量化した. 数理モデリングでは, 着地において必要となる重力, 揚力, 抗力を用いて, 迎え角によってそれらの力を変化させることで速度を制御する力学モデルを構築した. 構築した数理モデルを用いた数値シミュレーション結果と計測データを比較することで, 迎え角がウミネコの着地動作において重要な役割を果たしていることを確認した.

近年，機械学習を用いた技術が活発に研究され，組合せ最適化問題に適用するという試みも行われている．組合せ最適化問題の一つである巡回セールスマン問題(Traveling Salesman Problem:TSP)に機械学習を適用する手法が提案されている．しかし，TSPは頂点数が増えるにつれて最適解を求めるのに非常に時間がかかり，都市数の多い問題を初めから学習するのは困難である．本研究では，TSPに機械学習を適用した既存の学習モデルに対し，入力サイズを大きくしてFine-tuningを適用することで少ない学習時間で学習を行う手法を提案，実装しその有効性を検証した．

再生可能エネルギー供給回路における
2目的最適化問題をMOEA/Dを用いて考察する.

There is a lot of efforts to exploit chaotic dynamics in solving combinatorial optimization problems. In particular, hardware implementation of such chaotic systems will be effective for a rapid solution. In this paper, we investigate the effect of bit-length in a Hopfield-type chaotic neural network. Through numerical simulations to solve traveling salesman problems (TSPs) as an illustration, we show that a suitably short bit-length may give a better result.

カオス写像として良く知られているベルヌイ写像から生成される実数値系列を，Walsh関数系を利用して２値化した２値系列は平衡（0と1が等確率）でかつi.i.d.（独立同分布）であるとともに，互いに直交することが理論的に示されている．本稿では，テント写像とWalsh関数系を用いて得られる直交カオス２値系列の理論的解析結果を示す．

時変ルールセルオートマトンの安定性を、簡素な特徴量を用いて解析する。

セルオートマトンを2層構造にした場合の動作を, 簡素な特徴量を用いて考察する.

光リザーバコンピューティングにおいてマルチモードを使用したモード分割多重を導入することにより，ニューロン数を増加させた処理の可能性を示した．

脳の情報処理様式にヒントを得た計算モデルの中で，リザバーコンピューティングは，特に時系列処理に向いており，単純な構造であるためハードウェア実装にも適している．また，リザバー層のネットワークとしての安定性を保存しつつ，カオスダイナミクスを導入する手法として，カオスニューラルネットワークリザバー（CNNR）が提案されている．本稿では，CNNRのダイナミクスとそのリザバーとしての性能を時系列予測特性を用いて検討する．結果として，高次元カオスダイナミクスにも関わらず，CNNRはリザバーネットワークとして機能することが分かった．

分散アンテナシステムのスケジューリングを最適化するために効用関数が最大化するよう定式化し，QNN ハミルトニアンと分散アンテナシステムの効用関数及び制約項を係数比較することで相互作用及び外部磁場を導出する．またコンピュータシミュレーションによって提案手法が高速に最適なスケジューリングを実行していることを確認する．

近年、半導体レーザカオスを用いた高速物理乱数生成が注目されている。しかしながら、物理乱数源自体の時系列データから非再現性を評価する手法は確立されていない。これまでに時系列データに対して評価が可能な(ε,τ)エントロピーが提案されている。そこで本研究では数値シミュレーションにおいて、光注入された半導体レーザにおけるカオス時系列を生成し、(ε,τ)エントロピーによる評価を行った。また理論値としてモデル式からKSエントロピーを算出し、(ε,τ)エントロピーとの比較を行った。その結果、両者に非常に高い相関があり、(ε,τ)エントロピーを用いた非再現性の評価が可能であることが分かった。

エラスティック光ネットワークでは，周波数領域に一定の帯域幅の領域（FSU）を規定し，その整数倍の帯域を持つデータ流を送ることができる．本技術では，通信ノードにおいてノンブロッキングな光スイッチ網が必要となる．このような光スイッチ網としてWSW1構成が提案されている．本構成において，周波数軸上に複数FSUの帯域幅を持つメタスロットを定義し，１つのメタスロットは１つのデータ流で占有されるように接続を確立すると，FSU数を低減でき，ハードウェア量を削減できる．この手法において必要なFSU数を最小化する問題を考え，本最小化問題は最短路問題にモデル化することで容易に解けることを明らかにする．