自分の頭の中にある考えや新しい研究成果を理系文書として執筆・作成するときに，ハードウェアやソフトウェアの設計の考え方が生かせることを，技術雑誌Interface/トランジスタ技術SPECIAL（CQ出版社）の編集の立場から紹介します

情報検索とゼロショット学習

オンライン最適化は不確定な環境のもとで意思決定を繰り返す状況を扱う枠組みであり，機械学習への応用をはじめ，広告配信や投資配分の最適化など幅広い適用先をもつ．本講演では，オンライン最適化アルゴリズムの評価指標であるリグレットの概念を導入した上で，いくつかの問題設定においてリグレットを小さくするアルゴリズムを示す．加えて，オンライン最適化における損失関数についてのフィードバック情報が制限された状況に対応する（敵対的）バンディット最適化問題を導入し，知られている結果や近年の進展について述べる．

無線通信分野、特に電波伝搬予測において機械学習応用への関心が高まっている。電波伝搬特性は環境依存性が強く、正確な予測には予測モデルを使用環境に適合させる必要がある。精度の高い予測モデルの獲得には大量のデータが必要であるが、データ収集には人的および時間的コストがかかる。本稿では、広域受信電力予測を例として、少数のデータからでも高精度なモデルの獲得を可能とする技術として、計算機シミュレーションを活用した転移学習およびデータ拡張手法について紹介する。

近年，画像認識用途に深層学習が幅広く用いられているが，学習用データを大量に集めることが困難な分野への適用が課題であり，より少ないデータで効率的に学習を行うための研究が盛んに行われている．アプローチのひとつとして，学習していない未知クラスを認識可能とするゼロショット学習があるが，認識率の高精度化が実適用時の課題となっている．本研究では，認識率に寄与する画像特徴量と寄与しない画像特徴量を要素分解しながら学習し，前者を選別して認識する手法を提案し，高精度化が可能であることを示した．本講演では，上記画像処理を対象としたゼロショット学習を中心に，少サンプル学習の最新技術について紹介を行う．

我が国の施設園芸の特徴は、施設1棟の面積、導入された設備の分布が、欧米をはじめとする諸先進国と比較して、極端なピラミッド構造になっていることである．研究開発分野では、1980年代から、各種電子工学技術の応用研究が活発になされてきた．しかし、これらの導入・普及は進展せず、ピラミッドの頂点の数%に留まるか、廃れてしまった．昨今の半導体素子の劇的なコストパフォーマンスの向上は、コストによる導入障壁をほぼ撤廃可能にした．中小規模・多棟離散園芸施設の生産者にまで、電子化による労務・収益性の改善の恩恵をもたらすために残された課題はどのようなものか．また、それを解決するためにどのような方法が期待できるのか．これらについて、演者の専門である施設園芸環境計測制御システムを対象に論じる．

農業は異常気象の多発，農家の高齢化や担い手の減少，消費者嗜好の多様化等により，栽培管理技術の高度化と経営戦略の見直しが急務の課題となっている．そこで，これらの課題の解決を目的に，「スマート農業」に関する研究が全国規模で進められている．中でも，画像処理・解析に関する研究が注目されており，画像情報から得られた作物の生育特徴量の農業への活用が期待されている．また，近年ではIoTやAIを活用した植物フェノタイピングに関する研究も盛んに行われており，植物の生育特徴量の定量化に大きく貢献している．本研究では，環境センサや画像情報を用いた植物の生育特性の計測・評価技術について事例を示しながら紹介させていただく．

我々のプロジェクトでは，牛の飼育管理の大部分をIT化することにより，アニマルウェルフェア(AW)や環境の状態を定量化しながら，これらと生産における経済性を向上させ，かつ生産者と消費者の繋がりを深めて畜産復興や倫理消費を推進することを目指している．本発表では，AW自動評価を目指したシステムの研究開発の構想ならびに概要と，最近の成果を紹介する．

配送計画問題は，様々な制約条件の下で，複数の車両を用いて全ての客をちょうど 1 回ずつ訪問するような経路の中で，コストが最小のものを求める問題である.配送計画問題は実務的な問題であり様々なモデルが提案されている.本発表では，様々なタイプに適応可能な汎用的な局所探索法について時間枠付き配送計画問題を例に解説する.

現在、物流クライシスが取り沙汰されている中で、ラストワンマイルの配送も、まだまだ改革の余地があるのが現状である。
最適化を用いることでそんな現状を打破しようと、名古屋大学で研究を行っているメンバーがその研究結果である配送計画をラストワンマイル配送の現場に提示したが、現場では使えないと言われる結果であり、その要因は研究では考えないようなラストワンマイル配送独特の制約や考え方のためであった。
それらを反映しながら、サービスを向上させてきた経験をもとに、配車計画の最適化、配送ルートの最適化の世界において、現場の現状、現場からの声、最適化で出来ることについてお話させていただく。

少子高齢化による労働力不足のなか,ｅコーマス（電子商取引）は拡大しており,加えて新型コロナウイルス感染防止策も必要となり,物流・流通の現場では, あらゆる工程において自動化が求められている. 東芝グループは, 創業者, 田中久重によるからくり人形を原点に,郵便番号読み取り区分機など, 様々な自動化機器を開発し,実用化してきた。本稿では東芝グループのCyber Physical System (CPS)を結集した物流ロボット技術について,最新技術や実用化事例を紹介する.具体的には,入庫用の荷降ろしロボット,仕分け用のピッキングロボット,搬送ロボット（AGV）などについて説明する.

物流システムの仕分け作業において，ロボットアームが把持する物体を決めるため，画像中の各物体の種類が何で，それらの物体がどの位置に，どの姿勢で存在するかを正しく認識する手法が必要となる．既存の画像認識の手法では，大量の訓練サンプルを事前に収集しておくことが前提条件とされている．本稿では，教師信号の付与コストを抑えた画像認識の手法を紹介する．具体的には，物体側面を用いた訓練サンプルの自動生成，および，姿勢パラメータの教師信号が不要な物体姿勢推定について議論する．

バスや鉄道など県内の公共交通を取り巻く環境は，モータリゼーションの進展や利用者の減少，運転手不足の深刻化などにより，非常に厳しい状況にある。徳島県では，交通資源を総動員し、ポテンシャルを最大限活用するという認識の下，未来に向けた地域公共交通の羅針盤として「次世代地域公共交通ビジョン」を策定した。まちづくりとの連携，関係機関の連携強化，役割分担の明確化の３つの視点を持ち，公共交通の最適化，利便性の向上，利用促進という３つの柱を立て，モーダルミックスの推進や新たな運行形態の導入など６つの処方箋を施すことで「徳島ならではの地域公共交通ネットワークの実現」を目指す。

地方行政におけるLPWA通信の活用事例について

　自転車を都市交通手段の一つとして活用するための道路交通施策が進んでいる．本論では，我が国の自転車交通の特性とともに，特に我が国特徴的に多くみられる交差点の出会い頭事故について，その原因とされる逆走自転車の危険性に着目して，その原因を探るドライビングシミュレータ実験，安全向上を図るための情報通信を活用した試みについて紹介する．

ICT活用によるタクシー業界のゲームチェンジ～SaaSサブスクモデルによる配車革命～(仮)