総務省では，2020年1月から総務大臣主催の「Beyond 5G推進戦略懇談会」（座長：五神真東京大学教授，第30代総長）を開催して議論を行い，6月に「Beyond 5G推進戦略」を公表した。本戦略は，「2030年代に期待される社会像」を構想した上で，その基盤たる「2030年代に目指すべきBeyond 5G」の実現に向け，昨今の新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響も加味し，今後十年間で取り組むべき課題を包括的に盛り込んだものである。本戦略に従い，「研究開発戦略」，「知財・標準化戦略」及び「展開戦略」の三つのパートに分類される様々な取組が進められている。本講演では，戦略の全体像を概括した上で，上記三つのパートごとの最近の取組状況を紹介する。

Beyond 5G推進コンソーシアム　企画・戦略委員会配下に白書分科会が設立され、コンソーシアムとしての白書作成に向け、検討が進められている。白書分科会の目的は以下のとおりである。
・2030年代に期待される強靭で活力のある社会を展望し、Beyond 5Gのユースケースや通信の要求条件と技術を明確化する。
・Beyond 5Gコンセプトを早期にとりまとめ世界的に発信し、ITU含む国際的議論に反映するとともに、国際的なイニシアチブを確立する。
・他業界の意見を積極的に取り込みかつ発信し、あらゆる産業界にとって有益なBeyond 5Gコンセプトを作り上げ、国際競争力強化に貢献する。
議論を効率的に進めるため、白書分科会内に2030年代の社会観やユースケース、要求条件などを検討するビジョン作業班と、Beyond 5Gに向けた技術動向を検討する技術作業班を設け、検討が進められている。本講演では各作業班での検討状況を述べる。

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人間の基本的な社会活動は相互のコミュニケーションに支えられている。日常生活の平時はもちろんのこと、被災時や緊急時の有事における1ビットのデータ (安否確認)通信であっても情報通信の重要性は疑う余地がない。近年、移動通 信が進化し、グローバルに情報通信が可能となったが、今でも、通信ができない 地域や、通信ができない状況は多くある。コロナ禍でさらに情報通信の果たす役 割の重要性は疑う余地がなくなっている。 「万物を繋ぐ」ことができる「最新の高度情報通信技術」を「安価に」「高度専 門知識なく」「自らの手で創る」ことで「未開拓領域」においても情報通信の利 活用のイノベーションを創出することを目指すべきである。 万物を繋ぐコミュニケーションを完全にするために、ありとあらゆる技術を駆使 して、未開拓領域の情報通信を一つでも多く可能とする研究を推進すべきである。本講演では、Beyond5Gに向けた情報通信の革新を民主化により進める戦略を紹介し、日本全体の未来社会の創成への期待を議論する。

6Gの胎動 ～みんなでつくる6G～

5G(第5世代移動通信システム)やBeyond 5Gの時代、デジタルトランスフォーメーションはさらに加速し、あらゆるものがデジタル化され実世界との融合が深く進んでいく。ここでは、2030年の世界に向けて、Beyond 5Gがどのような新しい社会を形作っていくのかというビジョンを、「人間・空間・時間」を超えていくという観点から、そしてそのためのテレコミュニケーションの進化の観点から述べる。そして、デジタルツインやミリ波通信の活用などBeyond 5Gに向けたさまざまな技術進化をAI技術とNW技術の共進化として捉え(Co-evolution of AI and NW)、今後注力すべきと考える技術領域や技術課題、そして産学共創による研究開発について紹介する。

6Gでは，陸・海・空・宇宙における様々なデバイスが、衛星、HAPS等で構成されるNTN（Non Terrestrial Network）による超広域ICTインフラ基盤を通して接続されます．当社は，衛星通信・放送事業で培った実績や知見、並びに各種衛星インフラとNTT様が実現に取り組んでいるIOWN構想とを連携させることで、地上インフラと統合された新たな「宇宙統合コンピューティング・ネットワーク」の構築と事業化を目指しているところです．NTNを光・無線通信で統合し，分散コンピューティングによって様々なデータを高速に処理し、ユースケースに応じて最適化するものです．

「情報通信の夢とそれによって実現される豊かな未来社会に向けて果敢に挑戦し、革新的技術及びイノベーションを継続的に創出する学会として大きく飛躍する」ことが求められています。6G実現に向けた学会活動の今後の在り方として、(1)産業界との連携の活性化 (2)企業が参加しやすい環境づくり (3)論文を書かなくても発表や議論ができる場づくり (4)ベンチャーや異分野との交流の場としての機能 (5)自由闊達な交流ができる「意見交換会」(6)オープンイノベーションのマッチングの場の提供 (7)生涯教育・スキルアップ・産学官連携拠点 (8)グローバルな視点で様々な技術との接点促進 (9)産業界側の学会活動に対する評価を高めるための施策 (10)国内関連学会との連携強化 (11)国・行政との連携促進等が挙げられます。学会活動を楽しみながら、切磋琢磨できる知的交流の場としての価値を高めるには、どのようにすればよいか、皆様と議論を深めたいと思います。