近年，監視カメラ等の映像処理においてAIによる物体検出技術が急速に発展している．AIを用いた物体検出では，人や車等の物体の位置を中心としたBounding Boxと呼ばれる領域を検出する．ただし，複数の物体が混在する環境下において，Bounding Boxの精度が安定しないという課題がある．本発表では，物体検出結果を時系列に追いかける物体追跡技術の概要と，不安定なBounding Boxをロバストに追跡するOCTETについて紹介する．
OCTET: OCclusion Tolerant Extended object Tracking

機械学習は情報科学や統計学だけでなく非常に広範な分野において研究・応用されている．近年では複雑な機械学習手法が開発，パッケージ化されているため，利用者はパッケージ内部で問題が発生していても気づきにくい．そのような問題の一つが，不均衡データの訓練による推定値の偏りである．不均衡データを訓練に用いると多数派のデータを出力しやすい推定器が訓練されることがある．不均衡データへの対策の一つがデータバランシングである．データバランシングはデータを生成することでデータの分布の均衡を取る手法である．本講演では，時系列データを含むデータセットの正解ラベルが不均衡である際に用いるデータバランシング手法に関して述べる．

近年、画認識技術は大幅に進化したが、微小物など見た目の情報が極端に少ない対象を
認識することは難しい。本発表では、そのような微小物を画像上の見た目だけでなく映像
中の動き方に基づいて時系列認識するアプローチを紹介する。ワクチンなど液体医薬品の
異物検査シーンでは、従来は微小な気泡と異物を自動で分類することが困難だった。そこ
で、異物と気泡の動き方が異なる点に着目し、浮遊させた対象を高速カメラ映像上で正確
に追跡し、動き方に基づいて学習・分類する。実験の結果、異物を見逃さずに気泡の誤検
知を抑えられることを確認した。

交通流をモデル化する場合，固定された経路がある車両や鉄道に比べ，広い空間における人の流れや空域の航空交通流は，経路が一定ではなく，特徴抽出が難しい．このような固定経路がない交通流のモデル化においては，通過頻度の高い軌道を交通の要所として抽出する必要がある．そこで，空間分割，軌道クラスタリングやスケルトン抽出と言った手法を組み合わせ，交通流データから主要経路を抽出し，グラフ化する手法を提案する．このグラフは，空間の重要性に応じてネットワークの粒度が選択可能な抽象化グラフであり，経路が一定ではない交通流のモデリングに資することができる．

機械学習を使ったシステムが広まっている一方で，機械学習モデルによってシステムが差別的な振舞いを行う可能性が問題となっている．実際に，再犯予測，雇用，与信などといった人の生活に関わる重要な決断において，機械学習が不公平な振舞いを行うことが報告されている．このような問題から，学習した機械学習モデルが公平になるような機構をもった機械学習アルゴリズムの開発が進められてきた．本公演では，機械学習における公平性の基本的な考え方から始まり，最近の機械学習の公平性の重要な技術を紹介する．特に，近年の理論的成果を中心に紹介する．

近年，ある変数に変化を加えたときに別の変数に変化が起きるだろうか，もし起きるとすれば，その大きさはどの程度だろうか，といった因果的な問題を統計的に扱う統計的因果推論に関する研究が盛んに行われている．
本講演では，因果推論の問題を決定理論的に定式化し，ベイズ基準のもとで最適な推定量を考えることの有効性を検討する．
また，ある推定対象とその推定問題に対する評価基準が定まったときに，その推定問題の理論的な限界を導出することも非常に重要な研究課題といえよう．
本講演では，このようなアプローチを取っている研究をいくつか紹介し，統計的因果推論における情報理論的な方法の有効性を検討する．

機械学習は近年様々な領域において大きな成功を収めている一方で，ロバスト性や公平性といった予測の信頼性に関する問題が次々と報告されている．こうした問題は予測性能が非常に高いモデルや訓練手法においても見られている．本講演では機械学習アルゴリズムの学習基準と学習したモデルの良さを特徴づける評価基準の差異に着目する．この両者を明確に区別することで，アルゴリズムによる予測が我々の期待する性質を持つかどうかを検証し，また目的に応じて適切な学習基準を設計することを目指す．具体的には我々が最近行った敵対的ロバスト性や類似度学習に関する研究結果の紹介を行い，学習基準と評価基準の差を通じて信頼性の高い機械学習を実現する方法に関して議論する．

情報理論における二つの代表的な乱数生成問題（Resolvability問題とIntrinsic Randomness(IR)問題）は固定長情報源符号化と密接な関係があることが知られている．本稿では

深層学習がなぜうまくいくのかという疑問に答えるべくその統計的学習理論を紹介する．特にその関数近似能力および最適化能力に関して議論し，深層学習には対象の関数の形状に合わせた適応的推定が可能であることを紹介する．また，その適応能力により線形推定量と比べて次元の呪いを回避できることや関数の滑らかさの非一様性への適応性といった優れた性質を持っていることを紹介する．また，横幅の広い過剰パラメータ化されたネットワークの最適化を議論する．特に，平均場勾配ランジュバン動力学の収束理論および関連する最適化手法を紹介しその理論解析の結果を説明する．

著者らこれまでにひずみゲージなどの可撓性を有するセンサを用いて，筋電義手を処方できない短断端患者や上肢の筋電信号発生が難しい麻痺患者にも適用できる皮膚センシング技術を提案してきた．その技術は，皮膚変形に応じて伸縮するひずみゲージの曲げひずみに比例する微小な電圧変化量をオペアンプ等のアナログ回路で多段増幅し，大きな電圧変化量に変換する皮膚センシング技術である．さらにこの技術を応用して，食べ物の飲み込み時に生じる喉全体の皮膚変形を「立体的変化」として捉えて，「のど仏」の前方移動の計測も試みている．本発表では，皮膚センシング技術の概要や電動義手を使った臨床実験，嚥下機能評価の概要について紹介する．

きたるべきSociety 5.0ではIoT化によりあまねく情報が収集，集約され活用されることから，Trillion Sensorsの概念でも謳われているように実空間とサイバー空間をつなぐインターフェースである「センサ」の重要度が高まっている。我々の研究グループでは，あえてブロードな検出特性のセンサを用いて多項目のセンシングを実現するマルチモーダルセンシングの計測概念を提案し，それを実現する半導体CMOSセンサを開発してきた。本講演ではマルチモーダルセンシングに適したCMOSセンサチップ開発の実例としてイオンイメージセンサや におい センサを挙げ，この計測概念で重要な機械学習を用いたデータ解析に触れるとともに，機械学習型センシングの一例を紹介する。またこれらセンサのスマート農業分野などへの応用展開についても触れ，センサシステム実用化に向けた現状と課題について議論する。

我が国の科学技術政策の一つであるSociety 5.0構想は，IoTによってすべての人やモノを接続し，様々な知識や情報を共有することで，新たな価値を生み出そうとするものである．一方で，現在のIoT機器は，機器のサイズの問題，あるいはメンテナンス性の問題から設置できない場所があったりと，「あらゆる情報を収集する」という観点では，完全ではないといえる．本発表では，Society 6.0にむけて，現在のIoT機器の「パーベイシブ化」を阻む要因となっている事項と，解決に向けてどのような研究が実施されているのか紹介する．

本国は人の働き方の多様性を担保できる社会を目指し，IoTによる人とモノの接続をおこなう Society 5.0が提唱され，ビッグデータや機械学習をベースにさまざまなデバイスやシステムの開発が進められている．国土交通省が進めるPLATEAUや経済産業省が進めるデジタルトランスフォーメーションもその一つである．一方で，これらデバイスやシステムは人が使うものであるにもかかわらず，人の知覚や認知特性がそれほど重要視されていない．本発表では，防災教育を軸に人の知覚や認知特性をどう生かすべきかについて研究成果を含め紹介する．

IoTを実現する主要部品は半導体集積回路(LSI)である．Jack Kilby氏の発明から
50年以上が経過し，世界の人口をも超える100億個以上のトランジスタが1チップに集積化
されている．本講演ではSi集積回路の信頼性を説明し，IoTで実現される現代および近未
来社会について述べる．

人々が保持するWi-Fi端末（スマートフォン等）から発せられる電波を利用し、観測対象エリアでの人数検知および人流予測を実現する技術を説明する。また、これらの技術を応用したSociety5.0が指向するスマート社会の例として、有事時の際の危機管理対策などを紹介する。

JST CREST 研究課題「AI 集約的サイバーフィジカルシステムの形式的解析設計手法」の概観と現在上がっている研究成果について講演する．本研究課題ではAIを含むサイバーフィジカルシステム (AI-CPS) の設計手法に関する研究をフランス ANR のファンディングを受けているチームと共同で行っている．数々の興味深い成果がすでに得られており，本講演ではこのうちのいくつかの成果について概観する．

to be updated

We present ongoing work on black-box checking for Cyber-Physical Systems (CPS). CPS are commonly modelled using hybrid systems due to their ability to represent both discrete and continuous behaviour of systems. We are interested in discovering bugs that do not satisfy a given requirement specification. The process of obtaining such a bug or counter-example is called falsification. In this work, we employ the technique of Black-box Checking (BBC) for identifying a falsifying instance by combining learning of CPS into a hybrid automaton (HA) model and applying model checking.

In this work, we focus on synthesizing a controller for STL tasks using Recurrent Neural Network (RNN). The controller in this work can particularly deal with multiple STL specifications, in which the user is able to choose an STL task among multiple ones.
To deal with multiple tasks, we propose the notion of ``STL2vec'', which is a mapping from STL tasks onto the vector points, and these points are fed to the additional inputs to the RNN.
Finally, simulation examples illustrate the benefits of our approach.

深層展開は反復型アルゴリズムの収束を加速するための深層学習技術に基づくパラメータ調整手法であり，無線信号処理などの分野において近年活発に研究が進められている．本講演では，深層展開を用いたモデルベース制御系設計手法の確立を目指した講演者らによる取り組みを紹介する．