電子情報通信と科学の共創する未来

プレナリーセッション

広島大学 総合科学部L棟 L102講義室

3月19日 9:30-10:00
学会会長挨拶
中沢正隆 氏 電子情報通信学会会長
「未来に輝く電子情報通信学会に向けて」
     10:00-10:30
表彰式
学術奨励賞授賞式・教育功労賞授賞式・フェロー称号贈呈式
     10:30-10:45
休憩
     10:45-12:15
基調講演
1)松本 眞 氏 広島大学理学研究科代数数理講座教授
「擬似乱数の世界標準:メルセンヌツイスター」(10:45-11:30)
2)川端弘治 氏 広島大学宇宙科学センター長
「広島から挑む「マルチメッセンジャー」天文学」(11:30-12:15)
中沢正隆

中沢正隆

電子情報通信学会会長

1980 年3 月東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程修了
1980 年4 月日本電信電話公社茨城電気通信研究所
1984 年9 月マサチューセッツ工科大学電子工学研究所客員研究員
1989 年7 月日本電信電話株式会社NTT 伝送システム研究所グループリーダ
1999 年4 月同R&D フェロー,東北大学電気通信研究所客員教授
2001 年4 月東北大学電気通信研究所教授
2008 年4 月同Distinguished Professor(DP)
2010 年4 月同電気通信研究所長
2010 年4 月同国際高等研究教育機構長
2011 年4 月国立大学附置研究所・センター長会議会長
2011 年10 月東北大学電気通信研究機構長
2018 年4 月同機構特任教授DP(現在に至る)
電子情報通信学会超高速光エレクトロニクス(UFO)時限研究専門委員会委員長,ELEX編集委員会幹事,光通信インフラの飛躍的な高度化に関する(EXAT)時限研究専門委員会委員長,エレクトロニクスソサイエティ会長,総務理事,副会長,次期会長,フェロー,名誉員
2007 年OSA(Optical Society of America)Board of Directors at Large,2014 年IEEE Photonics Society,Board of Governors,2016 年IEEE Sendai Section Chair,IEEE フェロー,OSA フェロー,応用物理学会フェロー
1983 年本会学術奨励賞,1994 年,1998 年,2000 年,2002 年,2012 年本会論文賞,1994年,1996 年本会業績賞,2002 年本会猪瀬賞(最優秀論文賞),2009 年本会エレクトロニクスソサイエティELEX 最優秀論文賞,2009 年本会功績賞,2017 年本会マイルストーン(3 件),1980 年丹羽保次郎記念賞,1989 年櫻井健二郎氏記念賞,1990 年IEE,Electronics Letters Premium Award,1997 年科学技術庁長官賞,2002 年IEEE,D.E. Noble Award,井上春成賞,服部報公賞,2003 年市村産業賞,2005 年OSA,R.W. Wood Prize,2006 年東レ科学技術賞,Thomson Scientific Laureate,2008 年総務省志田林三郎賞,2009年内閣府産学官連携功労者表彰内閣総理大臣賞,2010 年紫綬褒章,応用物理学会光・量子エレクトロニクス業績賞,IEEE,Quantum Electronics Award,2013 年日本学士院賞,応用物理学会業績賞,C&C 賞,2014 年OSA,C.H. Townes Award,2015 年藤原賞,河北文化賞など各受賞

未来に輝く電子情報通信学会に向けて

昨年の6月に会長に就任し、早10か月が経過した。その間学会が抱える様々な課題について一歩一歩改革を進めている。
この講演では昨年6月の「会長就任にあたって」と題して講演した内容を基に、その後の電気学会との連携、支部との連携、ソサイエティにおける論文誌の向上などへの取り組みについてお話しする。
そして、電子情報通信学会の将来ビジョンについてアカデミアと企業と連携を中心にお話しし、まとめとしたい。


松本 眞

松本 眞

広島大学大学院理学研究科・教授

私立麻布高校卒業後、東京大学理科1類入学、同大学理学部情報科学科進学、同大学大学院情報科学専攻(修士課程)に進学したが、純粋数学に転向するため数学専攻博士課程に進学。
計算機と純粋数学の二足のわらじで暮らす。
京都大学数理解析研究所助手に就職。その後、慶応義塾大学理工学部専任講師、九州大学数理学科助教授、京都大学総合人間学部基礎科学科助教授、広島大学大学院理学研究科教授、東京大学大学院数理科学研究科教授、現在は広島大学大学院理学研究科教授。
純粋数学分野で京都大学から博士(理学)を、擬似乱数分野で東京大学から博士(工学)を取得。
2014-2015日本数学会理事。
1997年ごろから西村拓士氏、斎藤睦夫氏らと共同開発した擬似乱数「メルセンヌツイスター」が世界標準として使われるようになる。
この業績でInstitute of Combinatorics and its Applications 1997年度 Kirkman Medal受賞,日本数学会建部賢弘賞,日本IBM科学賞,第4回船井情報科学振興賞,平成18年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門),平成19年度日本学術振興会賞,第46回市村学術賞功績賞,第3回藤原洋数理科学賞・大賞などを受賞。

擬似乱数の世界標準:メルセンヌツイスター

擬似乱数発生法とは、計算機の中で「でたらめに見える数列」を作る技術である。ほとんどの現象は大量の確率的要素をはらむものであるから、それをシミュレーションするには大量の「でたらめに見える数列」を必要とする。従って、あらゆる科学・工学の世界で、擬似乱数は実用に供されている。その中でも、我々が提唱した「メルセンヌツイスター」というアルゴリズムは、(メモリを少々贅沢に使うことにより)様々な数学的保証を持ち、高速で、世界標準擬似乱数の一つとして普及している。一方、近年GPUなどメモリ使用量が限られるプラットホームの台頭により、メモリ使用の少ない擬似乱数アルゴリズムが普及してきた。しかし、そのような擬似乱数には欠陥を持つものもある。なぜ、「欠陥がないものがすでに普及している」のに、「欠陥があるものが新たに標準化されてしまう」のだろうか。講演者としてはちょっとグレて「擬似乱数研究分野って良くわかりません」といいたい気持ちだが、そこをこらえて「良く分かる部分」を解説することにより、擬似乱数研究の現状をお伝えしつつ、皆様のお知恵を拝借したく思う。擬似乱数のデザイナーに欠けているもの、それは「ユーザーの声」ではないかと思う。


川端 弘治

川端 弘治

広島大学 宇宙科学センター センター長・教授

1990年3月 岩手県立釜石南高等学校(現 釜石高等学校) 卒業
1994年3月 東北大学理学部 天文及び地球物理学科第一 卒業
1999年3月 東北大学大学院理学研究科 天文学専攻 修了、博士(理学) 取得
1999年4月 国立天文台 光学赤外線天文学・観測システム研究系 研究員
2003年11月 広島大学大学院理学研究科 助手
2004年4月 広島大学宇宙科学センター 助手
2009年4月 広島大学宇宙科学センター 准教授
2017年4月 広島大学宇宙科学センター 教授・センター長
(受賞歴)
広島大学学長表彰(2010年10月)、
第9回森田記念賞(東北大学理学部物理系同窓会 泉萩会)(2013年10月)、
日本本天文学会欧文研究報告論文賞(2016年3月、日本天文学会)

広島から挑む「マルチメッセンジャー」天文学

 人類は近代に至るまで、可視光のみで宇宙を捉えてきましたが、戦後、電波やX線など、可視光以外のあらゆる電磁波による天体観測ができるようになり、そして近年には電磁波以外の到来情報よる新たな天文学が本格化しました。
 2015年9月14日に米国の重力波望遠鏡LIGOが、世界初の重力波の直接検出に成功し、2017年のノーベル物理学賞受賞に繋がりました。
その後に検出されている重力波イベントの多くは、十〜数十太陽質量のブラックホール同士の衝突起因であることが判り、これまで天の川銀河系内で見つかっているブラックホールよりも大きな質量を持つものが数多く見出されています。さらに欧州のVirgoも加わって検出された重力波イベントGW170817では、電磁波の対応天体が初めて見出され、中性子星連星の合体による現象であると同定されました。この発見は、宇宙における鉄よりも重い元素がどうやって生成されたのかという天文学上の命題の解決にも繋がると期待されています。
 一方、この重力波による新発見の興奮が冷めやらない2017年9月22日、南極の氷床に建設されたニュートリノ観測施設IceCubeが高エネルギーの宇宙ニュートリノを捉えました。その速報を受けた追跡観測や解析から、約40億光年先の活動銀河核がその放射源であると見出されました。宇宙由来のニュートリノの放射源が特定されたのは、太陽と、超新星1987Aに続き、3つ目となります。
 このように近年、重力波天文学とニュートリノ天文学が大きく花開きましたが、これには広島大学宇宙科学センターや東広島天文台での観測も貢献しています。講演では、これらのいわゆる「マルチメッセンジャー天文学」の最新の動向も交えて、判りやすく紹介したいと思います。

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